入社時に有給休暇を10日付与した場合、年5日の取得義務はどうなる?
入社日に年次有給休暇を10日付与し、その後は毎年4月1日に社員全員へ年次有給休暇を付与する会社では、年5日の取得義務について注意が必要です。
例えば11月1日入社の場合、
- 11月1日:10日付与
- 翌年4月1日:11日付与
となります。
この場合、11月1日を基準とした5日の取得義務期間と、4月1日を基準とした5日の取得義務期間が重複します。
会社としては、それぞれの基準日から1年間について5日を取得させる方法のほか、重複する期間を一つにまとめて比例按分する方法も認められています。
なぜ4月に一斉付与すると5日の管理が複雑になるのか?
年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、労働基準法第39条第7項により、会社は基準日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。
例えば11月1日に10日を付与した場合、原則として11月1日から翌年10月31日までの1年間で5日の取得を管理します。
ところが、翌年4月1日に11日を付与すると、4月1日から翌年3月31日までについても新たな5日の取得義務期間が始まります。
この2つの期間が重複するため、従業員ごとに管理すると複雑になります。
このような場合、厚生労働省は、重複する期間を一つの期間として、期間の長さに応じて5日を比例按分して取得させる方法を認めています。

比例按分する場合は何日取得させればよい?
比例按分する場合は、最初の基準日から、次の基準日の1年後までを一つの期間として、「月数÷12×5日」で必要な取得日数を計算します。
例えば11月1日入社の場合、
- 11月1日:10日付与
- 翌年4月1日:11日付与
- その翌年3月31日:2回目の取得義務期間終了
となります。
11月1日から翌々年3月31日までは17か月なので、
17か月÷12か月×5日=7.08日
となります。
そのため、1日単位で管理する場合は8日以上、半日単位での取得を認める場合は7.5日以上の取得が必要です。
入社月ごとの必要日数は次のとおりです。
| 入社月 | 比例按分する期間 | 計算上の日数 | 必要取得日数 |
|---|---|---|---|
| 4月 | 12か月 | 5.00日 | 5日 |
| 5月 | 23か月 | 9.58日 | 9.5日または10日 |
| 6月 | 22か月 | 9.17日 | 9.5日または10日 |
| 7月 | 21か月 | 8.75日 | 9日 |
| 8月 | 20か月 | 8.33日 | 8.5日または9日 |
| 9月 | 19か月 | 7.92日 | 8日 |
| 10月 | 18か月 | 7.50日 | 7.5日または8日 |
| 11月 | 17か月 | 7.08日 | 7.5日または8日 |
| 12月 | 16か月 | 6.67日 | 7日 |
| 1月 | 15か月 | 6.25日 | 6.5日または7日 |
| 2月 | 14か月 | 5.83日 | 6日 |
| 3月 | 13か月 | 5.42日 | 5.5日または6日 |
※半日単位での取得を認めている場合は、0.5日単位で管理できます。1日単位で管理する場合は、端数を切り上げて管理します。
例えば2月1日入社の場合、14か月を対象として、
14か月÷12か月×5日=5.83日
となるため、1日単位で管理する場合は6日以上の取得が必要です。
なお、4月入社については翌年4月1日の付与がちょうど1年後になるため、取得義務期間の重複はありません。この場合は、4月1日から翌年3月31日までの1年間で5日を取得させれば足ります。
比例按分を使わない場合はどうする?
比例按分は必ず行わなければならないものではありません。
比例按分を行わない場合は、それぞれの基準日から1年間について5日の取得状況を管理します。
例えば11月1日入社であれば、
- 11月1日~翌年10月31日:5日
- 翌年4月1日~翌々年3月31日:5日
という2つの期間を管理します。
ただし、4月1日から10月31日までの期間が重複するため、管理は複雑になります。
そのため、4月1日に年休を一斉付与している会社では、比例按分によって重複する期間を一つにまとめて管理する方法も検討できます。
実務では年休管理表をどう作ればいい?
会社がこの方法を採用する場合は、従業員ごとに次の項目を管理するとよいでしょう。
- 入社日
- 入社時の年休付与日
- 入社時の付与日数
- 4月1日の追加付与日
- 年5日の取得義務期間
- 比例按分した必要取得日数
- 実際の取得日数
- 不足日数
特に重要なのは、「年休を何日持っているか」だけではなく、「年5日の取得義務について何日取得しているか」を別に管理することです。
また、時間単位で取得した年次有給休暇は、年5日の取得義務の5日には算入できません。
よくある勘違いと注意点
「11月入社なら5日、4月からも5日なので合計10日取得させる」と単純に考える必要はありません。
取得義務期間が重複する場合には、厚生労働省が示す比例按分によって、重複する期間を一つの期間として管理できます。
一方で、比例按分を利用せず、それぞれの期間について5日を管理することも可能です。
会社としてどちらの方法で管理するのかを決め、年休管理簿などの運用を統一しておくことが重要です。
また、入社時に法定の基準日より前倒しして年休を付与している場合は、翌年度以降の付与日についても、前倒しした期間を考慮する必要があります。
まとめ
- 入社時に10日、翌年4月に11日を付与する会社では、5日の取得義務期間が重複することがある
- 重複した場合は、それぞれの期間について5日を管理する方法がある
- 厚生労働省が示す比例按分によって、重複する期間を一つにまとめて管理する方法もある
- 比例按分は「月数÷12×5日」で計算する
- 11月入社なら17か月となり、7.5日または8日以上の取得が必要
- 2月入社なら14か月となり、6日以上の取得が必要
- 4月入社は取得義務期間が重複しないため、通常どおり5日を管理する
- 会社として比例按分を利用するかどうかを決め、従業員ごとの取得状況を管理することが重要
労務の結論メモ:「入社時に10日+毎年4月1日に一斉付与」という制度を採用している会社は、年休の付与日だけでなく、年5日の取得義務についてもセットで管理方法を決めておきましょう。
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