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二以上事業所勤務の社員に昇給があったら月額変更届は必要か

複数の会社で社会保険に加入している「二以上事業所勤務」の社員が、1つの会社で昇給した際、月額変更届(随時改定)の手続きが必要なのか悩む担当者は少なくありません。他社での給与額や正確な等級が分からないため、自社だけで判断してよいのか迷うケースが多発しています。

目次

複数で社保加入している社員の随時改定の結論

自社単体の給与変動で2等級以上の差がない場合は、月額変更届の提出は不要です。他社での給与額を確認する必要はなく、自社の支給額ベースで要件を満たしていない限り、実務上の手続きは何も発生しません。

自社単体での判定がルールとなる根拠

二以上事業所勤務被保険者の随時改定は、日本年金機構の規定により、それぞれの事業所ごとに独立して「報酬月額に著しい変動(2等級以上の差)があったか」を判定することになっているからです。

  • 情報の非開示が前提 他社の給与額は個人情報であり、自社が把握することは不可能です。そのため、実務上も法原則上も、まずは「自社の変動のみ」でふるいにかける仕組みになっています。
  • 按分率のズレは国が許容している 1つの会社で給料が変われば、本来は保険料の按分比率(負担割合)が変わります。しかし、2等級以上の大きな変動がない限り、その微調整のために毎月手続きをすることは現実的ではないため、年 1 回の「定時決定(算定基礎届)」までそのズレは据え置くことが認められています。

自社単体で2等級以上の差がない場合の実務対応

自社単体で2等級以上の差がない場合、担当者が行うべき実務は「何もしない(次回の算定基礎届まで待つ)」となります。具体的な確認と、システム特有の罠を回避する手順は以下の通りです。

  1. 自社だけの支給額で変動を計算する 昇給(または降給)した月を起点に、その後の連続した3ヶ月間に自社が支給した固定的賃金と変動賃金の平均額を算出します。
  2. 「自社単体の報酬額」を標準報酬月額の等級表に当てはめる 他社分を合算する前の、純粋な「自社の支給額」を通常の健康保険・厚生年金保険の等級表に当てはめ、従前と比べて2等級以上の差があるか確認します。
  3. 他社の給与を追跡・推測しない 「他社でも上がっているかも」といった予測は一切不要です。自社単体でクリアしていなければ、書類を提出する大前提を満たしていません。

担当者のための「月変スルー」確認チェックリスト

自社で処理を完結させるための判断基準です。すべて「はい」であれば、今回の手続きは一切不要(スルー)で確定です。

  • [ ] 昇給・降給があったのは自社(または他社のみ)である
  • [ ] 自社単体の支給額で計算した結果、従前の「自社割当分」の報酬から2等級以上の変動がない
  • [ ] 給与計算システムの「月変アラート」に騙されず、自社単体の金額で確認した
  • [ ] 1等級の変動であっても、最高等級(上限)や最低等級(下限)をまたぐような極端な変動ではない

よくある勘違いと実務上の注意点

他社と合算した総額ベースで2等級以上の差が生まれていたとしても、自社単体で2等級以上の差がなければ、会社から月額変更届を出すことはできません。

  • 給与計算システムの「月変予定者一覧」の罠に注意 実務で最も注意すべきなのが、社労士ソフトや給与計算システムの自動判定機能です。システム上、マスタには「2社合算後の決定等級」が登録されていることが多いため、システムが「2等級以上の差あり!」とアラートを出してくれないケースが頻発します。画面上の等級差の表示を鵜呑みにせず、必ず「自社単体の報酬額」にフォーカスして判定し直してください。
  • 「按分率が変わるから出さなきゃ」という誤解 実務担当者が陥りやすいもう一つの罠がこれです。確かに按分率は変わっていますが、2等級以上の差がないマイルドな変動のときは、年金事務所も随時改定の手続きを受け付けません。
  • 自社単体で2等級以上の差がある場合は話が変わる もし自社単体で2等級以上の差があった場合は、迷わず自社分の月額変更届を出してください。他社との合算や、最終的に月変に該当するかどうかのジャッジ、新しい按分率の計算は、すべて書類を受け取った年金事務所側が裏で行い、結果だけが通知されます。

まとめ

  • 複数の事業所で社保加入している社員の随時改定は、自社単体の変動のみで判定する。
  • 自社の給与改定で2等級以上の差がないなら、他社の状況に関わらず月額変更届は提出不要
  • システム上の「月変候補一覧」は合算等級で狂うリスクがあるため、必ず自社単体の金額で再確認する。
  • 1会社での給与変動による按分率のズレは、年1回の算定基礎届(定時決定)まで放置してよい
  • 自社単体で要件を満たしたときだけ書類を出せば、あとの合算や按分率の計算は年金事務所が自動で行ってくれる。
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