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会社は従業員の有給取得日を指定できる?強制できるケースと注意点

目次

会社が「この日に有給を取って」と一方的に決めることはできるのか

原則として、会社が従業員に対して一方的に有給休暇の取得日を指定することはできません。 有給休暇の時季指定権は労働者にあり、従業員が請求した日に取得させるのが法律上のルールです。

ただし、例外的に「計画的付与制度」を導入している場合や、「年5日の取得義務」を果たすための調整が必要な場合に限り、会社が取得日に関与することが認められています。

会社が有給休暇の取得に関与できる「2つの例外」

労働基準法では、従業員の権利を尊重しつつも、円滑な事業運営のために会社が取得日を指定できる仕組みが2つ用意されています。

  1. 有給休暇の計画的付与制度(法第34条の4) 労使協定を締結することで、有給休暇のうち5日を超える分について、あらかじめ会社が取得日を割り振ることができます。お盆休みや年末年始、ブリッジホリデー(祝日の間の平日)を全社一斉の有給取得日にする際によく活用されます。
  2. 年5日の年次有給休暇の確実な取得(法第39条第7項) 年10日以上の有給が付与される従業員に対し、会社は年5日を確実に取得させる義務があります。自発的な取得が進まない従業員に対しては、会社が本人の意見を聴取した上で、時季を指定して休ませる必要があります。

会社が有給取得日を指定する法的根拠とルール

有給休暇の原則は「労働者の時季指定権」であり、会社の権利は「時季変更権」にとどまります。

  • 労働者の時季指定権(原則): 従業員が「この日に休みます」と言えば、その日に休ませる義務があります。
  • 会社の時季変更権(例外): 従業員が指定した日に休まれると「事業の正常な運営を妨げる」場合に限り、別の日に変更してもらう権利です。あくまで「変更」であって、休み自体を消滅させることはできません。
  • 計画的付与の5日枠: 従業員が個人的な事情(病気や急用)で使えるよう、少なくとも5日間は従業員が自由に使える分として残しておかなければならないというルールがあります。

実務ではどうするか:トラブルを防ぐ有給管理の手順

中小企業の現場では、感情的な対立を避けつつ、適正な有給消化を進めるための「仕組み化」が重要です。

1. 就業規則と労使協定の整備

会社が有給に関与するには、まず根拠が必要です。

  • 就業規則に「時季指定に関する規定」を盛り込む。
  • 一斉休業などを行う場合は「計画的付与に関する労使協定」を締結する。

2. 「年5日義務」の管理フロー

義務を果たすための具体的な運用ステップは以下の通りです。

  • 基準日の把握: 各従業員に有給が付与された日をリスト化する。
  • 意向確認: 半年が経過した時点で、取得が2日以下の従業員に対し「いつ休みたいか」希望を聞く。
  • 時季指定の通知: 希望が出ない場合のみ、会社が「〇月〇日に取得してください」と指定する(書面やメールで記録を残す)。

3. 時季変更権行使の判断基準

「忙しいからダメ」と安易に拒否するのは危険です。

  • 代替要員の確保に努めたか、その日でないとこなせない業務か、客観的な理由を説明できるようにしておきます。

【実務担当者用】有給取得管理チェックリスト

  • [ ] 全従業員の「有給付与日(基準日)」と「残日数」が一覧で管理されているか
  • [ ] 年10日以上付与の対象者に、5日以上取得させているか(管理簿の作成義務)
  • [ ] 計画的付与を行う場合、労使協定は最新のものか(有効期限等)
  • [ ] 会社が時季指定を行う際、事前に本人の意見を聞くプロセスを挟んでいるか
  • [ ] パート・アルバイトも付与日数に応じて「5日義務」の対象になっているか確認したか

よくある勘違い・注意点:やってはいけない「強制」と「買取り」

実務で陥りやすいミスや、法令違反のリスクについて整理します。

「明日暇だから有給にして」はNG 会社都合による急な休業を「有給消化」として処理することはできません。これは有給の強制にあたります。会社都合で休ませる場合は、有給ではなく「休業手当(平均賃金の60%以上)」の支払いが必要です。

有給の買い取りによる消化 原則として、有給休暇を買い取ることで「取得させたこと」にする運用は認められません。ただし、退職時に使い切れない分を買い取ることや、法定を上回る日数を付与している場合の超過分については例外的に認められる場合がありますが、原則は「休ませること」が義務です。

時季変更権の濫用 慢性的な人手不足を理由に、常に時季変更権を行使して休ませない運用は「権利の濫用」とみなされます。会社には、有給を取得しやすい体制を整える努力義務があるためです。

まとめ

  • 原則は従業員の申請ベース。 会社が勝手に日付を決めることはできない。
  • 「計画的付与」には労使協定が必要。 ただし、本人が自由に使える5日間は残す。
  • 「年5日義務」未達の場合のみ、会社は時季を指定できる。 その際も本人の希望を尊重する手順が不可欠。
  • 「時季変更権」は最終手段。 事業の正常な運営を妨げる場合にのみ認められる。
  • 実務では「有給管理簿」を作成し、計画的に取得を促す体制を作る。

労務の結論メモ:会社が一方的に指定するのではなく、制度を正しく理解した上で、事前のコミュニケーションを通じて計画的に消化してもらうのが、最もリスクの低い実務運用です。

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