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残業代は払いたいが単価は上げたくない…頑張りを報いる賃金設計の考え方

目次

頑張った分は報いたい、でも残業代が膨らみ続けるのは避けたい

「遅くまで頑張っている社員には、ちゃんとお金を払ってあげたい」
「でも、基本給を上げると残業単価まで一緒に上がって、人件費が読めなくなるのが正直怖い」

中小企業の社長から、非常によく聞く悩みです。
“払いたくない”わけではない。むしろ払う前提だけど、制度の作り方が分からない。

この記事では、「残業代はきちんと払う」ことを前提にしつつ、頑張りを正しく報いる賃金設計の落としどころを、実務目線で整理します。


結論:月々は定額で安定させ、頑張りは賞与で報いるのが現実解

結論から言うと、バランスが最も取りやすいのは次の設計です。

  • 月々の給与: 基本給 + 固定残業手当で定額化し、毎月の人件費を安定させる
  • 日々の頑張り・繁忙期の貢献: 固定分を超えた残業代は別途支給し、評価分は賞与で上乗せする

この形であれば、「働いた分はきちんと支払う」「毎月の人件費が読みやすい」「社員の頑張り損を防げる」という3点を同時に満たすことができます。

※固定残業手当が含まれる場合は、計算根拠の明示が必須です。


基本給を上げると「残業単価」も自動的に上がってしまう

なぜ「基本給アップだけ」で解決しようとすると危険なのでしょうか。 残業代は、次の式で計算されます。

残業代 = 時給換算額 × 割増率(1.25など)

この時給換算額のベースになるのが、基本給や役職手当です。
つまり、「基本給を上げる → 時給が上がる → 残業単価も自動的に上がる」という構造になっています。

将来さらに昇給したり、人員が増えたりすると、この「連動して膨らむ残業代」が経営を圧迫する要因になりがちです。一方で、賞与(ボーナス)は原則として残業代の計算基礎に含まれません。ここを切り分けて考えるのが、賃金設計の実務ポイントです。


実務ではどうするか?「月給の安定」と「評価」を切り分ける

具体的には、以下の3つのステップで制度を運用します。

固定残業手当(みなし残業)の導入

「月〇〇時間分の残業代として、〇〇円を支給する」と明確に定めます。
これにより、残業が少ない月でも給与が安定し、会社側も月々の人件費を想定しやすくなるメリットがあります。

固定分を超えた残業は必ず別途支給する

固定残業代は残業代をカットする制度ではありません。
固定時間を超えて働いた分については、1分単位で、割増率をかけて必ず別途支給します。
ここを守ることが、「働いた分は払いたい」という社長の想いを形にする最低条件です。

日々の頑張りは「賞与」で報いる

毎月の残業時間だけで評価するのではなく、「繁忙期を乗り切った」「チームを支えてくれた」「数字や成果を出した」といった総合的な貢献を賞与で評価します。賞与は業績に応じて変動させられるため、会社を守りながら、社員の頑張りにしっかり報いるための「調整弁」として非常に優秀です。


よくある勘違い・注意点:固定残業代を導入する際の必須ルール

制度をうまく回すために、次の点は必ず押さえておく必要があります。

  • 固定残業代を「残業代ゼロ」の口実にしてはいけない: 「定額で払っているから、何時間残業しても同じ」という運用は違法です。超過分を払わないと、未払い残業代請求のリスクが一気に高まります。
  • 契約書・就業規則への明記: 「どの手当が」「何時間分の残業代なのか」を明確に記載しなければ、固定残業代として認められない可能性があります。
  • 最低賃金の下限チェック: 基本給を抑えて手当を厚くする場合でも、基本給部分(時給換算)が最低賃金を下回っていないかは毎年必ずチェックが必要です。

まとめ:「払う前提」で設計すれば会社も社員も守れる

  • 基本給を上げすぎると、残業単価も連動して上がり続ける
  • 固定残業手当を活用し、月々の人件費を「想定内」に収める
  • 超過分は必ず支払い、プラスアルファの評価は賞与で還元する
  • この設計が、将来の昇給や人員増にも耐えやすい現実的な形

労務の結論メモ:「残業代は払いたい」という社長の想いは、制度設計を工夫すれば、会社を苦しめるものにはなりません。毎月のコストは安定させ、利益が出たときに賞与でしっかり還元する。このサイクルこそが、社員の納得感と会社の持続性を両立させる正解です。

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