管理職だから残業代ゼロでいい?訴えられる「名ばかり管理職」の境界線
「管理職だから残業代は出ない」
この一言が原因で、元社員から「名ばかり管理職」として
未払い残業代を請求され、訴訟に発展するケースが後を絶ちません。
多くの中小企業では、現場で一番長く働いている店長や課長を管理職扱いしていますが、実は裁判になると会社側が敗訴し、多額の支払いを命じられるケースが非常に多いのが実情です。
名ばかり管理職とは?残業代が発生する理由
結論からお伝えすると、肩書きは管理職であっても、法律上の「管理監督者」としての要件を満たしていなければ、会社は残業代を支払わなければなりません。
法律は役職名などの形式ではなく、仕事の「実態」で判断します。 実態が伴わない名ばかり管理職と判断された場合、過去2〜3年分の未払い残業代や遅延損害金など、経営を揺るがす甚大なリスクを背負うことになります。
管理監督者と認められる法的基準【裁判・労基署の判断】
労働基準法上の「管理監督者」は、経営者と一体的な立場にあり、自分の労働時間を自分で管理できる人を指します。
裁判や労基署の調査では、以下の実態がない場合、管理監督者性は否定されます。
- 経営方針の決定に関与しているか
- 部下の人事権(採用・解雇・考課)を持っているか
- 自分の出退勤時間を自分で決められる裁量があるか
- その職責にふさわしい十分な賃金を得ているか
これらを満たさない人は、法律上は「一般社員」と同じ扱いになり、1日8時間を超える労働にはすべて割増賃金が必要になるというのが法律の理屈です。

名ばかり管理職と判断されやすい3つの典型ケース
現場でよくある敗訴・トラブル事例を整理しました。自社の役職者がこれに当てはまっていないか確認してください。
ケース①:店長だが現場の労働力がメイン
- シフトの穴埋めに追われ、接客や実務に張り付いている
- 自分の判断で帰宅できず、社長の指示待ち状態
- 店長という肩書きはあるが、アルバイトの採用権限すらない
👉 現場作業がメインであると判断され、残業代が必要になります。
ケース②:役職手当が残業代に見合わない少額
- 役職手当が月3万円程度と低い
- 月60時間以上の長時間労働が常態化している
- 時給換算すると、残業代をもらっている部下より低くなっている
👉 管理監督者にふさわしい待遇とは言えず、否認される可能性が極めて高いです。
ケース③:勤務時間が厳格に管理されている
- タイムカードで1分単位の遅刻・早退を管理されている
- 遅刻や早退をすると、基本給から「欠勤控除」が行われる
👉 時間の自由がない「労働時間の規制を受けている社員」とみなされます。
役職手当=残業代込みは通用しない理由
「うちは役職手当にすべての残業代が含まれているから大丈夫」という理屈は、実務上は通用しないケースが多いです。
- 固定残業代としての明記が必要: 就業規則や雇用契約書に「役職手当のうち〇〇円は〇時間分の固定残業代とする」と明確に区分して記載していなければ、残業代の充当とは認められません。
- 深夜・休日分は別: 仮に管理監督者であっても「深夜割増(22時〜5時)」は免除されません。また「名ばかり管理職」とされた場合は、深夜・休日・時間外のすべてが未払いとして計算されます。
1人の役職者から訴えられ、未払い残業代の支払いが認められてしまうと、「他の役職者も同じ状況ではないか」と社内全体に波及するのが最も恐ろしいリスクです。

名ばかり管理職が発覚した場合の会社リスク
- 名ばかり管理職は訴訟リスクが非常に高く、会社側が敗訴する例が多い。
- 判断基準は「肩書き」ではなく、経営権限や時間の裁量といった「実態」。
- 店長や課長クラスを「管理監督者」として扱うのは、特に慎重な判断が必要。
- 「役職手当=残業代込み」とするなら、法的な形式(固定残業代)を整える。
- 判定に迷う場合は、あらかじめ残業代を支払う体制にする方が安全。
自社の管理職の働き方を改めて見直し、不安がある場合は雇用契約書や就業規則の整備から進めていくことが、将来の訴訟リスクを避ける唯一の方法です。

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